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獣医学生、新卒獣医の大学卒業後進路、就活状況〜現役獣医から見た視点〜
獣医学生の就職希望調査
獣医関連業界における、就職に関する様々な問題を解決する目的で、獣医学生を対象としたアンケート調査を行った。
背景
- 現在、獣医関連業界における就活状況をみると、採用される獣医学生側も情報不足等に悩み、採用側も学生が確保できないなど、双方で悩みを抱えている。
- この問題要因の一つとして、採用側が、獣医学生の悩みやニーズ等を把握しきれていないこと考えられるが、これまで、大規模な調査が行われたことはない。
- そこで、獣医学生に対し、就活に関するアンケート調査を実施することとした。
目的
- 採用側は、学生のニーズ等を知ることで、効果的な採用活動が可能となり、より効率的に人材を確保し、就職のミスマッチも軽減することができる 。
- 学生側は、調査結果を通じて、同じ獣医学生の考え方を知ることで、就活への意識向上につながる。
- それらをサポートする大学等にとっても、サポートのあり方を間挙げる上での参考情報になる。
手法
- 獣医系大学の獣医学生について、アンケートによる調査を行った。
- アンケートは紙媒体で行い、基本的に集合調査法を利用し、6年生などの時間が取れない者に対しては、用紙を渡し、後日回収した。
- 期間は、平成24年度~平成25年度に行った。
- 結果については、単純集計を行うとともに、目的に応じて統計処理やクロス集計等も行う。
大学の内訳
アンケートは6大学、685人から回答を得た(獣医学生の10%以上)
各大学の出身地一覧
首都圏出身者が多いが、人口に比例した割合であると考えられる。
各大学には、周辺の都道府県出身者が多い傾向がある(例:岐阜大学は、愛知県や岐阜県出身者が多い)
首都圏出身者が多い
大学周辺の都道府県出身者が多い
獣医学生が1番興味のある分野
- やはり小動物臨床が1番人気
- 地方公務員と産業動物臨床があとに続く
・小動物臨床が1番人気。
・地方公務員と産業動物も人気だが、需要(都道府県の数、支店数)が多く、供給が足りないか。
・就職先の枠は少ないが、動物園や野生動物も人気。
・農林水産省の調査と比べると、実際の分野別割合とリンクしていることから、学生のときの興味が進路に強く影響していることが示唆される。
1番興味のある分野を選んだ理由
- 待遇面よりも、自分のやりたいことか、やりがいがあるか、動物に触れることができるかどうかが、などの精神面が興味を左右する
- 待遇面よりも、やりたいことや、やりがいなどの精神面(気持ち)を重視。
- 自分のやりたいことに興味がわくのは当たり前ではあるが、やりたいことが新たに見つかれば、進路先も変わるという見方もできる。
- 動物に触れることができるかどうかが3位に入っているが、動物好きが多い獣医学生にとって、生の動物がいない職場は、少しさびしいのかもしれない。
- 待遇面を明確に上で、やりがい等をアピールすることが重要
- ハード面や研修は、あまりアピールポイントにならないのかもしれない。
獣医学性の就活の状態
5年生から具体的に考えはじめている
・学年が進むについて、具体的な活動をし始める傾向にある。
・とくに、5年生になってから急激に活動が増加する。
本調査は後期に行ったので、言いかえれば、4年の後期までは60%以上の学生が具体的な行動を起こしていない。
就活に関する情報源はどこから?
知り合いを通じた情報収集がもっとも多い
HP等のネットの活用も多く、説明会等も重要
・大学教員や先輩といった、大学での知り合いを通じた情報収集がもっとも多い。
・HP等のネットを活用した就活がトレンド。
・首都圏の大学では、実習や説明会の割合がもう少し増えるものと思われる。
獣医学生が求めている就活情報
やりたいことができるかどうかに関心
待遇面での情報公開がカギになる
自分のやりたいことができるのかがもっとも気になっていることなので、会社に来るとどういうことができるのかが重要。
給料や勤務時間等の待遇面に関する関心が非常に高い。
待遇面は、「興味のある分野を選んだ理由」では順位が低かったにも関わらず、ここでは高い。
つまり、就活において待遇面に関する情報が少ないことを意味している。
雰囲気が第3位に入ってきているので、実習の際は、様々なスタッフと会ってもらったり、仕事以外の雰囲気も感じてもらうのも重要かもしれない。
初任給の希望(手取り)
20~24万円が最も多く、実際よりもやや高い傾向がある
業種によるが、小動物臨床や公務員は、残業代がつかない場合、手取りが20万円を切る場合もあるので、希望額はやや高めではある。
いずれにせよ、給料は「ほしい情報」の第2位に入っているため、重要である。
また、初任給だけでなく、昇給に関しても重要です。
女性の獣医師、獣医学性に関する情報
結婚・出産後も働きたいか?その理由は?
ほとんどの女性が結婚・出産後も働きたいと思っている
理由は、「好きな仕事だから」が圧倒的に多かった。
獣医学科は、獣医師になりたくて入学する場所であり、その職業をやめたくないのは当たり前かもしれないが、好きな職業だからこそ、続けたい。
結婚・出産後に職場に配慮してほしいこと
待遇や制度だけでなく、戻ってきやすい職場の空気がもっとも大切
待遇面や制度の改善だけでなく、「戻ってきやすい空気をつくる」ことが、非常に重要であることがわかった。
逆にみれば、現場に復帰する際に、非常に大きなハードルがあることを、学生のうちから感じてしまっているということを意味する。
「空気」というのは具体的な対処をしにくいが、その空気をつくるためにも、女性の意見を取り入れた職場環境づくりと、スタッフ同士のコミュニケーションが大切になると考えられる。
待遇面や制度に関しては、休日を確保すること、福利厚生を充実させること、勤務時間に柔軟に対応することが重要であることがわかった。