本シリーズでは、私が経験した実際の症例をもとに、そこから考えられる座学とポイント、
私が思い描いた治療経過をまとめていきます。
そして、学生の時から知っておきたかった情報をまとめていきます。
第2回目は胃内異物、誤食です。
その中でも縫い針です。
猫は、朝一病院にきました。
昨日裁縫をしていて、ふと目を話した隙に
糸付きの縫い針を飲み込んでしまったというもの
しかも朝ごはんをあげて、食べたというのだ。
本当は異物の時は、特に穿孔するような先端が鋭利なものは消化管を動かしたくないので
絶食にして欲しかった(胃袋に針があってご飯がなければ、内視鏡で取れるから)
針ということは金属なのでレントゲンで写るはず...
撮ってみると
あった。しかもご飯も大量に食べている
うーん
一応
針は胃袋にまだ入っていそう
胃袋に大量のご飯
かな、ということはわかる。
症状も、嘔吐などなし
どういう治療方針にするか考える。
異物摂取の治療
通常異物を食べた時の治療は以下の4つに分かれます。
こんな方におすすめ
- 1 鋭利なものでなければ、食べて1時間以内や胃袋にあるのがわかる場合は注射で吐かせる(一番安全)
- 2 2−3日で排便として出ることもあるので、経過を見る(3に移行する可能性あり)
- 3 嘔吐し続ける、消化管閉塞を起こす場合は閉塞の可能性が高いので手術でお腹を開ける
- 4 竹串や針など、穿孔を起こす可能性のあるものは、内視鏡か開腹手術
1で明らかに大きいものを食べると、胃袋を通過して腸に行くことはなく胃袋に残ったままになり、時間が経過しても胃袋の中に残っている可能性が高いです。
一番危険なのは小腸で詰まることであり、大腸まで流れれば便として出てきますし、胃袋に残っていれば吐かせることが可能です。
通常は胃袋から小腸に流れるには、細かくならないと移動しない様になっています。
そうなると1の注射で吐かせることが可能となり、手術を回避できます。
しかし、吐かせるには、胃袋にご飯が入っている方が吐かせやすいです。
吐かせるには、トランサミンという止血剤を50mg/kg,ivすると吐くことが多いです。
3は、くだものの種や、おもちゃ、カーペットが多いです。
4の内視鏡は、胃袋にご飯が入っていない状況でないと困難であり
手術もできれば、ご飯が入っていない方が望ましい
注意ポイント
※紐状異物は口か、幽門で引っかかって、消化管を手繰り寄せるので危険
アコーディオン状の腸:イメージはゴム紐のズボンのゴムを引っ張った時のウエストのような感じ
糸に引っかかって、腸がアコーディオン状になる。
針状異物の誤食の治療
異物の治療法を踏まえると、今回のポイントは
先端が鋭利で、吐かせると、穿孔や食道を傷つける可能性があるため危険。食事が入っているので、すぐの内視鏡もできない。穿孔しているわけではないため開腹するほどの緊急性はない。
ということで、出した結論は
ポイント
入院して絶食して、次の日の朝にご飯だけ流れていれば、内視鏡で取る
次の日...
恐る恐るレントゲンを撮ってみる
ん?
ご飯は流れていそう
針は綺麗に胃袋の中に治っています。
よし!内視鏡できそう
ということでこの猫ちゃんの針は糸もついたまま内視鏡で取れました。
猫は興味のあるものは、口にしたり匂いをかいだりして確かめるので注意が必要ですね。