雑記

犬や猫に噛まれた時、引っ掻き傷に必要な対処法【獣医師解説】

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この仕事をしていると、生傷が絶えない。

犬や猫に噛まれたり引っかかれたり、

時にその噛む口は、歯石や細菌で非常に不衛生である。

特に猫の引っ掻き傷や噛み傷は、皮膚の奥深くに入るため、腫れることが多く、早急な洗浄が必要です。

今回は、臨床獣医師として働く上で避けることができない、

犬や猫に噛まれた時、引っ掻き傷について知っておくべき情報、知識と必要な対処法をまとめました。

犬や猫に噛まれた時に必要な対処法

傷のチェック

「何にいつ咬まれたか」

「狂犬病や破傷風の予防・治療が必要か」

「創の深さ(骨髄炎をおこすかどうか)」

 

咬傷や汚染された外傷では、破傷風の予防トキソイド接種を考慮します(以下参照)。

トキソイドは、過去10年以上接種歴がない場合に摂取を要します。

1968年以前の生まれなら、受傷直後・1ヶ月後・6ヶ月後の3回接種とし、その後は10年毎に1回とします。

1968年より後の生まれであれば、1回接種を10年おきとします。

汚染された創では5年以内でもトキソイドを接種し、極端に汚染されていれば、テタノブリン接種を考慮します。

 

ヒト咬傷

ポイント

洗浄、debridementが最も重要。

起因菌は口腔内嫌気性菌、Staphylococcus aureusが多いです。

 

感染徴候のない早期の場合

アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチR)375mgを1回1錠1日3回内服として、3日間内服します。

 

感染徴候の出現後(たいていは3-24時間以上経過してから出現)

入院管理が必要となることが多く、アンピシリン・スルバクタム1回1.5~3gを6時間毎点滴静注します。

 

ペニシリンアレルギーがある場合は、クリンダマイシン300mg1日4回内服に加えて、

シプロフロキサシン200mgを1回2錠1日2回(1日量800mg)またはST合剤1回2錠1日2回を投与します。

 

動物咬傷(ヒト以外)

一般的な原因としてはネコやイヌが多い。

ポイント

洗浄、debridementが重要なのはヒトと同様。

コウモリやイヌにかまれた場合には狂犬病の治療を考慮する(ただし、日本では稀である)。

飼い主に、狂犬病ワクチン接種歴があるかどうかを確認します。

注意ポイント

ネコにかまれた場合は80%程度の確率で感染します。

イヌの場合は5%程度です。

ネコやイヌの場合に注意を要するのはPasteurella multocida感染症であり、通常24時間以内に感染が成立します。

その他の原因菌としては、Staphylococcus aureus口腔内嫌気性菌が多い。

治療に関しては、Pasteurella multocidaを考慮した抗菌薬投与が必要です。

注意

同菌による感染症は致命的になりうるので、特に明らかな感染徴候がなくても、予防的に抗菌薬投与を行うことが推奨される。

第一世代セファロスポリンやクリンダマイシンが効かないため、

アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチンR)375mgを1回1錠1日3回内服として、3日間投与する。

参考

骨髄炎を合併する場合があるため、深い創では経過観察が必要です。

 

外傷後

汚染されていない創では、洗浄やdebridementを行います。

特に抗菌薬の投与を必要としません。

汚染された創では、治療方針決定のため、培養・グラム染色を行います。

起因菌

Staphylococcus aureus、A群および嫌気性Streptococcus、腸内細菌群、

真水にさらされている場合は、Pseudomonas属やAeromonas属などです。

感染が疑われる場合のみ抗菌薬による治療を行います。

抗菌薬はST合剤1回2錠1日2回に加えて、クリンダマイシン300mgを1日3回投与します。

第3世代セフェムやキノロンは通常不要である。

発熱があり、敗血症が疑われる場合は、入院管理とし、アンピシリン・スルバクタム3gを6時間毎などを使用します。

メモ

バンコマイシンの使用も(市中MRSAを疑ったときなどは)考慮します。

 

 

動物咬傷(ヒトを含む哺乳類咬傷)

合併症を防ぐ処置と薬物治療のポイント

ポイント

  • 動物咬傷はERやプライマリ・ケアでよく遭遇する健康問題である。
  • 哺乳類による咬傷、特にイヌが多くを占める。死亡例のほとんどは乳幼児・児童。
  • 咬傷に特有の受傷のメカニズム、感染症リスクの評価、破傷風ワクチンの接種状況、事故の状況、咬んだ動物の種類・ワクチン接種歴が問診上重要である。
  • 感染症の起因微生物として留意すべきものには、Pasteurella multocida、Bartonella henselae、Capnocytophage canimorsus、Clostridium tetani、Rabies virusなどがある。
  • 予防的抗菌薬は、混合感染・βラクタマーゼ産生菌の頻度が高いことを念頭に選択する。アモキシシリン/クラブラン酸合剤が第一選択。

 

はじめに

ヒトを含む動物咬傷は、ERのみならずプライマリ・ケア現場でも頻繁に遭遇する健康問題の一つです。

 

参考

米国では年間200~500万件の動物咬傷が起きており、これは救急外来の総受診件数の約1%に相当するとされています。

そのうち100万人以上が医療機関を受診し、うち約10%が何らかの処置を受け、1~2%が入院します。

動物咬傷の大部分(60~90%)がイヌ咬傷であり、次いでネコ(6~20%)、齧歯類(2~3%)、ヒト(2~3%)と続きます。

イヌ咬傷に限っても年間約42億ドルの医療費が発生していると推定されています。

米国では動物咬傷によって年間10~20人が死亡しておりそのほとんどは乳幼児や小さな子どもです。

 

日本では、イヌは狂犬病予防法に基づいて市町村保健所に登録され、環境庁から詳細な統計が出されます。

昭和49年の統計開始以降イヌ咬傷の報告数は年々減っており平成21年には年間5,000件を切りましたが、

死亡者は年間数名発生しています。

被害者・死亡者の多くは「飼い主・家族以外の人」で、事故発生時の状況は「通行中」が半分以上、

次いで「訪問・配達時」、「手を出した時」です。

事故の起こった場所は公園などの「公共の場所」が過半数を占めます。

イヌ咬傷事故件数と可住面積あたりのイヌ登録密度および人口密度との間には正の相関があるとの報告もあります。

ポイント

野犬の割合は年々減っており、平成20年代には3%前後となっています。

イヌ以外の動物咬傷に関するデータは乏しいのですが、

平成以降、リスザル、アライグマ、アナグマ、アナグマやフェレットなどのイタチ科動物、プレーリードッグ(リス科)といったペットによる咬傷が増えています。

ネコ咬傷も増えているように見えます。

以上から、

注意ポイント

現代の動物咬傷においては、ペットによる都市部での咬傷が主に問題になっていると推測されます。

 

動物咬傷のマネージメント:基本的な考え方

動物咬傷のマネージメントでは、

  1. 創の評価(問診、観察)
  2. 十分な初回創処置:洗浄、異物除去、郭清、
  3. 一時縫合するか否かの決断、
  4. 予防的抗菌薬投与の適応と選択
  5. 破傷風および狂犬病予防の適応

の判断を行う必要があります。

創傷一般については本誌別稿に詳しいので、動物咬傷で特に注意すべき点を中心に、以下に順番に触れていきます。

 

1 創傷の評価・観察

問診では、

チェックリスト

  • 受傷のメカニズムと受傷後経過時間
  • 感染症リスクの評価
  • 破傷風ワクチンの接種状況
  • 咬んだ動物の種類・事故の状況
  • 飼い主からはワクチン接種記録・最近の健康状態

 

を聞き出します。

受傷メカニズム:創傷のタイプの推測に参考になります。

例えば、ヒトが喧嘩で手拳に裂傷を負った場合(crenched fist injury)は第3ないし第4中手指節間関節や近位指節間関節などの深部構造を巻き込みやすく、感染リスクが高くなります。

受傷後経過時間:通常の外傷では、受傷後6時間ないし8時間以内は非感染創とみなされますが、

動物咬傷では皮膚常在菌や動物の口腔常在菌が入り込むことが多いと考えられるため感染・非感染の判断には慎重を要します。

感染症リスクの評価:糖尿病、血液疾患などの免疫抑制状態、ステロイド服用の有無などを確認します。

破傷風ワクチン・狂犬病ワクチンの接種状況:曝露後予防法の決定に必要です(表1、表2)。

咬んだ動物の種類・事故の状況・健康状態・ワクチン接種状況:後述のとおり動物の種類によって創傷のタイプや感染症の起炎菌が異なります。

野犬がいきなり咬んできた場合(unprovoked attack)、そのイヌは狂犬病に罹患している可能性が高いと推定し、

狂犬病曝露後予防の適応となります。

 

表1 破傷風の曝露後の予防法
過去の破傷風トキソイド接種回数 汚染されていない軽微な創傷 それ以外の創傷※1
破傷風トキソイドを含有するワクチン

※2

抗破傷風ヒト免疫グロブリン 破傷風トキソイドを含有するワクチ

※2

抗破傷風ヒト免疫グロブリン

※3

3回未満、

または回数不明

適応あり

※4

適応なし 適応あり 適応あり

※4

3回以上 最終接種が10年以上前の場合のみ 適応なし 最終接種が5年以上前の場合のみ 適応なし

 

※1:汚染、糞便、土、唾液などに汚染された創傷、刺傷、剥脱創、矢や槍などによる創傷、挫滅創、熱創または凍瘡など。

※2:CDCの推奨では、ジフテリア-百日咳-破傷風ワクチンの接種既往がある場合は、破傷風トキソイド単独よりも破傷風-ジフテリアワクチンのほうが良いとしている。

※3:トキソイド接種部位と別の部位に250単位を筋注、筋注用製剤が入手できない場合は静脈注射製剤を用いる。

※4:必要に応じて、通常の接種回数が終了するまで追加接種することを考慮する。

 

表2 狂犬病の曝露後予防法
ワクチン接種状況 製剤 投与スケジュール
接種歴なし 抗狂犬病免疫グロブリン 20単位/kgを創周囲にできる限り浸潤、残りを筋注
ワクチン ヒト二倍体細胞ワクチン(HDCV)または精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCECV)1mlを筋注、受傷日、3日後、7日後、14日後(免疫不全患者は28日目も)
接種歴あり 抗狂犬病免疫グロブリン 適応なし
ワクチン HDCVまたはPCECV1ml筋注を受傷日と3日後

 

創の部位:一般的に顔面は血流が豊富で治療が良好なため、非感染創であれば一次縫合が選択されることが多く

、頭皮、頸部、体幹、四肢近位も一次縫合が考慮されます。

しかし、動物咬傷では前述のとおり嫌気性菌感染症のリスクが高いので、

一次縫合の頻度は少なくなり、手足は感染のリスクが高く開放創とすることが多くなります。

創のタイプ傷laceraion injury(=水平型)なのか刺傷puncture injury(=垂直型)なのかを判断します。

ポイント

イヌでは前者が、ネコやヒトでは後者が多いとされます。

十分な止血・麻酔のうえで創部の洗浄を行い、創内部の観察を行います。

深部構造の創傷が認められた場合は、診療所の環境(医師のスキル、専門医へのアクセスなど)によりますが、

専門医へのコンサルテーションを検討すべきでしょう。

 

2 創の洗浄、異物除去、郭清

ポイント

洗浄の際には、洗浄液に何を使うかよりも十分な圧を加えて洗浄することが重要です。

水道水と生理食塩水との比較で差がなかったという報告があります。

創周囲を消毒し十分な麻酔をかけたうえでシリンジを用いてあるいはシリンジに静脈留置針外筒を付けて高圧で創内部を洗浄します。

創の汚染度が高いと思われる場合は、ブラシなどで擦過し、必要ならデブリードマンも行います。

 

3 (1)一次縫合の適応の検討

動物咬傷は基本的に感染創と考えて、一次縫合する場合でもドレナージを置きます。

ナイロン糸数本を創内に留置してドレナージを行います。

専門的設備に乏しいプライマリ・ケア設定でも簡便にできるのが良いところです。

深い刺傷など嫌気性菌感染のリスクが高い場合

あるいは創内異物が残存している可能性がある場合などは開放創として経過観察することが多くなります。

垂直に近い角度での咬傷ではドレナージの留置が困難な場合があり、

切開のうえデブリードマン・排膿が必要になることがあります。

 

3 (2)動物咬傷の微生物学

一次縫合の適応および次に示す予防的抗菌薬の選択を行ううえで、動物種ごとに特有な感染症を知っておく必要があります。

①総論

動物咬傷による感染の起炎菌は、動物の口腔内常在菌ヒトの皮膚常在菌であることがほとんどです。

複数の菌が検出されることが多く(平均5菌種)、嫌気性菌と好気性菌の混合感染が60%あったとの報告があります。

ブドウ球菌、連鎖球菌といった皮膚常在菌は40%にみられます。

②Pasteurella属

ココがポイント

通性嫌気性のグラム陰性球桿菌で、イヌ咬傷の50%、ネコ咬傷の75%に検出されます。

ヒト感染症を起こすのはP.multocidaで、創の深さにより蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、感染性関節炎、骨髄炎などを起こします。

通常ペニシリン系をはじめとした多くの抗菌薬に感受性があります。

③Bartonella henselae

ココに注意

グラム陰性菌でネコひっかき病の病原体として知られています。

ノミを介してネコに感染すると、赤血球内に長く存在し、ヒトへの感染源となります。

症状は、感染部位付近の皮膚にみられる水疱→紅斑→丘疹と変化するprimary inoculation lesionと、

局所リンパ節膨張(肘、腋窩、頸部、鎖骨上など)が主ですが、

肝脾種、神経症状、関節炎・筋痛、不明熱などの全身症状を呈することがあります。

アジスロマイシン、ドキシサイクリン、リファンピシン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンなどに感受性があるとされています。

④Capnocytophaga canimorsusおよびC.cynodegmi

イヌやネコの口腔内に常在するグラム陰性桿菌です。

C.canimorsusは、

特に無脾症患者やアルコール乱用または慢性肝疾患を有する患者において菌血症・敗血症や髄膜炎を呈します。

菌血症患者の死亡率は30%台と高率です。

⑤嫌気性菌

イヌやネコではBacteroides, Fusobasterium, Porphyromonas,

Prevotella,Propionibacterium,Peptreptococcusが、

ヒトではStreptococcus anginosus(52%)、

Eikenella corrodens(30%)、Fusobacterium nucleatum(32%)、Prevotella melaninogenica(22%)

が高頻度との研究があります。

⑥好気性菌

ヒト咬傷では頻度が高く(単独感染44%、混合感染54%)、

Staphylocossus aureusやStreptococciが多く、

ラクタマーゼ産生株が多かったとの報告があります。

 

4 予防的抗菌薬投与の適応と選択

前述の微生物学的特徴から、嫌気性菌をはじめとしたβラクタマーゼ産生菌を念頭に置いた抗菌薬選択が必要になります(表3、表4)。

イヌやネコの咬傷に対しては、小規模な臨床試験に基づいてアモキシシリン/クランブラン酸が推奨されています(エビデンス・レベルB-Ⅱ)。

ペニシリンアレルギーでアモキシシリンが使用できない場合は、

P.multocidaに抗菌活性をもつドキシサイクリン・第2世代以降のセファロスポリン(セフロキシムなど)・モキシフロキサシンなどを、

抗嫌気性菌活性をもつメトロニダゾールまたはクリンダマイシンと併用します。

組織内抗菌薬濃度を速く上げるために、初回投与に経静脈投与を好む専門家もいます。

感染リスクが高いと判断された場合、経静脈的抗菌薬投与を考慮します。

感染のリスクが高い創傷は、受傷後9時間を経過したもの、深い刺傷(ネコ・ヒト咬傷の感染リスクが高いとされる所以です)。

挫減創静脈血行・リンパ流が障害されている部位顔面性器手や骨関節に近い部位、外科的修復を必要とする創免疫不全者の側です。

ただし、表1の脚注のとおり、「汚染されていないclean」「軽減なminor」創傷の定義は曖昧ですので、リスクの判断は多分に主観的です。

アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム、カルバベネムなどが推奨されています。

ポイント

予防的抗菌薬の投与期間は通常3~5日間ですが、リスクに応じて延長します。

 

表3 動物咬傷に対する経験的抗菌薬(経口投与)
抗菌薬の種類 成人用量 小児用量
第一選択薬
アモキシシリン/クラブラン酸 875/125mg錠、1日2回(筆者注:本邦の錠剤は250/125mg) アモキシシリン換算20~5mg/kg。1日2回 (1回量最大ア モキシシリン875mg。クラブラン酸125mgまで)(筆者注:本邦の小児用ドライシロップ製剤は混合比14:1)
代替薬
P.multocida に抗菌活性を有する以下のいずれか:
ドキシサイクリン 100mg1日2回 8歳未満の承認は推奨されない
スルファメトキサゾール・ トリメトプリム製剤 400/80mg錠、

1回2錠1日2回

トリメトプリム

4~5mg/kg、1日2回(1回量最大 160mgまで)

セフロキシム 500mg、1日2回

 

10mg/kg、1日2回(筆者注:本邦では錠剤のみ)
モキシフロキサシン 400mg、1日1回 18歳未満の小児には慎重投与
上記に加えて、嫌気性菌に対する抗菌活性をもつ以下のいずれかを併用:
メトロニダゾール
クリンダマイシン
以下の薬剤は P. multocida への抗菌活性が低く、使用を避けるべきである:
セファレキシン
エリスロマイシン

 

表4 動物咬傷に対する経験的抗菌薬(経静脈投与)
成人 小児
グラム陰性および気性菌をカバーするための経験的処方としては:
βラクタム/βラクタマーゼ相害薬単剤
アンピシリン/スルバクタム 3g、6時間ごと 50mg/kg (アンビシリン換算)、6時間ごと(成人量を超えない)
ピペラシリン/タゾバクタム、4.5g、8時間ごと 125mg/kg(ピペラシリン換算)、8時間ごと(成人量を超えない)
カルバペネム系抗菌薬単剤 ※2
イミベネム/シラスタチン 500mg、6時間ごと 25mg/kg、6時間ごと(成人量を超えない)
メロペネム1g、8時間ごと

 

20mg/kg、8時間ごと(成人量を超えない)
その他の処方例 ※2
セフトリアキソン1g、24時間ごとなどの第三世代セファロスポリンに加え、メトロニダゾール500mg、8時間ごと セフトリアキソン100mg/kg、24時間ごとなどの第三世代セファ ロスポリンに加え、メトロニダゾール10mg/kg、8時間ごと(成人量を超えない)
フルオロキノロン(シプロフロキサシン400mg、12時間ごとやレボフロキサシン500mgkg、24 時間ごとなど)に加え、メトロニダゾール500 mg、8時間ごと 18歳未満へのフルオロキノロン投与は要注意。

※1:カルバペネムはβラクタムに対する即時型過敏症の既往がある患者には使用すべきではない。

※2:本邦では、静注用メトロニダゾールは未発売

 

5(1)破傷風トキソイド/抗トキソイド免疫グロブリンの適応

Costridium tetaniは偏性嫌気性グラム陽性桿菌で、哺乳類の腸管や土中に芽胞として存在し、

創傷を通してヒトの体内に入ると栄養型に変わってtetanospasmin を産生します。

栄養型細胞はペニシリン系をはじめ多くの抗菌薬に感受性ですが、芽胞は抗菌薬・消毒薬・高熱に耐性です。

穿通創・刺傷、 他の細菌との重複感染、壊死組織の残存、異物、局所の虚血といった受攻因子が重なると

破傷風が発症しやすくなります。

表1に米国ACIPの推奨をまとめました。

本邦では1968年以前には破傷風の予防接種が行われておらず、

平成 25年度時点で45歳以上の受傷者にはトキソイド接種(能書上、3~8週間の間隔を置いて2回の初回免疫、

1回日接種から6ヵ月以上を置いて1回追加免疫の計3回接種)とともに抗破傷風免疫グロブリンの投与を考えるべきでしょう

破傷風トキソイドの楽価は400~600円と比較的安価で、検定合格日から2年間有効です。

抗破傷風免疫グロブリンも1アンプル250国際単位=1回接種分が3,648円で5年間有効ですから、

外傷を診る機会がありうるクリニックであれば在庫をもって良いかと個人的には考えます。

そのイヌは狂犬病に罹患している可能性が高いと推定し、

狂犬病曝露後予防の適応となります。

 

表1 破傷風の曝露後の予防法
過去の破傷風トキソイド接種回数 汚染されていない軽微な創傷 それ以外の創傷※1
破傷風トキソイドを含有するワクチン

※2

抗破傷風ヒト免疫グロブリン 破傷風トキソイドを含有するワクチ

※2

抗破傷風ヒト免疫グロブリン

※3

3回未満、

または回数不明

適応あり

※4

適応なし 適応あり 適応あり

※4

3回以上 最終接種が10年以上前の場合のみ 適応なし 最終接種が5年以上前の場合のみ 適応なし

 

※1:汚染、糞便、土、唾液などに汚染された創傷、刺傷、剥脱創、矢や槍などによる創傷、挫滅創、熱創または凍瘡など。

※2:CDCの推奨では、ジフテリア-百日咳-破傷風ワクチンの接種既往がある場合は、破傷風トキソイド単独よりも破傷風-ジフテリアワクチンのほうが良いとしている。

※3:トキソイド接種部位と別の部位に250単位を筋注、筋注用製剤が入手できない場合は静脈注射製剤を用いる。

※4:必要に応じて、通常の接種回数が終了するまで追加接種することを考慮する。

 

(2)狂犬病ワクチンの適応

Rabies virusはRhabdoviridae科Lyssavirus属のRNAウィルスです。

筋紡維等から体性神経および自律神経系末梢に入り、逆行性に中枢神経に感染します。

睡液腺など、神経が豊富な組織で増殖し感染源となります。

潜伏期間は平均1ヶ月ないし3ヵ月と長めです。

Rabiesは米国ではイヌのみならず、ネコやコウモリ、アライグマ、スカンク、キツネなどの野生動物でも報告されています。

本邦では2006に海外で感染した狂犬病患者が2例報告されましたが、国内発症例は1957年以降報告されていません。

狂犬病を発症した動物は10日間以内に症状が出現し死に至るとされます。

したがって、咬傷を起こした動物を10日間観察して狂犬病を疑わせる症状が出なければ狂犬病ワクチンを接種する必要はありません

一方、unprovoked attackなど狂犬病を疑わす状況や症状が動物にみられる場合は早期に曝露後予 防を行います

可能であれば咬傷を起こした動物を確保し、安楽死の後に組織学検査に供して診断を確定します。

表2にACIPの推奨を示します。

表2 狂犬病の曝露後予防法
ワクチン接種状況 製剤 投与スケジュール
接種歴なし 抗狂犬病免疫グロブリン 20単位/kgを創周囲にできる限り浸潤、残りを筋注
ワクチン ヒト二倍体細胞ワクチン(HDCV)または精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCECV)1mlを筋注、受傷日、3日後、7日後、14日後(免疫不全患者は28日目も)
接種歴あり 抗狂犬病免疫グロブリン 適応なし
ワクチン HDCVまたはPCECV1ml筋注を受傷日と3日後

2010年、ACIPは曝露後のワクチン接種回数を4回に減らした新しい投与スケジュールを提示しましたが、

WHOのガイドラインでは引き続き5回接種が基本になっています。

さて、 狂犬病の曝露後予防については、生物製剤の供給不足が問題です。

抗狂犬病ヒト免疫グロブリンは世界的に供給不足となっており、本邦国内では 生産されていないため入手が非常に困難です (ISARVol.28p75-76: 2007年3月 号http://idsc.nih.go.jp/iasr/28/325/dj3259.html)。

さらに2006年の国内死亡例発生に伴う需要増加によって、ワクチンの入手もきわめて困難な状況が続いています

厚生労働省検疫所ホームページ FORTH (http://www.forth.go.jp/useful/vaccination02.html)に検疫所や予防接種機関データベースがあるので参考になります。

また、本ワクチンは化学及血清療法研究所(化血研)が製造しアステラス製薬が販売していますので、

同社に問い合わせるのが実際的かもしれません。

ちなみに、狂犬病ワクチンの薬価は9,446円です。

出典:NEJM 340:85,1999

Principles and Practice of Infectious Disease 6th edition, 3533-3555

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