本シリーズでは、私が経験した実際の症例をもとに、そこから考えられる座学とポイント、
私が思い描いた治療経過をまとめていきます。
そして、学生の時から知っておきたかった情報をまとめていきます。
前回に引き続き、今回は犬の誤食です。
犬は猫と異なり、サイズが多種多様なので、
大型犬であれば異物を食べても問題になることは少ないです。
しかし、犬はもともと興味のあるものを、匂いを嗅ぎ咥えて離さないという習性があるので、
何か咥えているものを無理に取り上げようとすると飲み込んだというのはよくある話です。
小型犬であれば、消化管も細いので、閉塞する可能性は高いです。
猫の異物については下記の記事をどうぞ!
-
現役臨床獣医師が解説!②猫が縫い針を食べた、誤食、胃内異物の治療
本シリーズでは、私が経験した実際の症例をもとに、そこから考えられる座学とポイント、 私が思い描いた治療経過をまとめていきます。 そして、学生の時から知っておきたかった情報をまとめていきます。 第2回目 ...
続きを見る
症例は
中型犬で昨日ネジを食べたかも
嘔吐などの症状はなかったが、一応心配で受診
というものでした。
今回はネジで、レントゲンで映るものでしたので、
撮ってみました。
1日も経過していないのに、もう小腸の中にありますね。
そして、腸が拡張している様子はないので、閉塞は起こっていなさそう。
またガスや腹膜炎もなさそうなので、穿孔もなさそう。
さて、治療はどうしようかな。
異物摂取の治療
通常異物を食べた時の治療は以下の4つに分かれます。
こんな方におすすめ
- 1 鋭利なものでなければ、食べて1時間以内や胃袋にあるのがわかる場合は注射で吐かせる(一番安全)
- 2 2−3日で排便として出ることもあるので、経過を見る(3に移行する可能性あり)
- 3 嘔吐し続ける、消化管閉塞を起こす場合は閉塞の可能性が高いので手術でお腹を開ける
- 4 竹串や針など、穿孔を起こす可能性のあるものは、内視鏡か開腹手術
1で明らかに大きいものを食べると、胃袋を通過して腸に行くことはなく胃袋に残ったままになり、時間が経過しても胃袋の中に残っている可能性が高いです。
一番危険なのは小腸で詰まることであり、大腸まで流れれば便として出てきますし、胃袋に残っていれば吐かせることが可能です。
通常は胃袋から小腸に流れるには、細かくならないと移動しない様になっています。
そうなると1の注射で吐かせることが可能となり、手術を回避できます。
しかし、吐かせるには、胃袋にご飯が入っている方が吐かせやすいです。
吐かせるには、トランサミンという止血剤を50mg/kg,ivすると吐くことが多いです。
3は、くだものの種や、おもちゃ、カーペットが多いです。
4の内視鏡は、胃袋にご飯が入っていない状況でないと困難であり
手術もできれば、ご飯が入っていない方が望ましい
注意ポイント
※紐状異物は口か、幽門で引っかかって、消化管を手繰り寄せるので危険
アコーディオン状の腸:イメージはゴム紐のズボンのゴムを引っ張った時のウエストのような感じ
糸に引っかかって、腸がアコーディオン状になる。
今回の治療は?
症状が出ていないこと、閉塞を起こしておらず、腸の中をかなり進んで流れているため、排便として出てくる可能性が高い
ということで経過観察として、2−3日ウンチを確認してもらいました。
胃袋にある時間は1-3時間であること、閉塞は小腸で起こることから、大腸まで流れれば問題ありません。
しかし、先端が鋭利のため、今後、消化管出血は起こる可能性がある、ということで経過観察しました。
犬は猫と異なり、サイズにより、同じ異物でも危険性が全く異なってきます。
しつけで、口に入れたものを、コマンドで出す訓練をしておきましょう。
口に加えた状態で、追いかけたり、怒るとそのまま飲み込んでしまう犬が多いです。
どうしても、犬の口が届く範囲に、飲み込みそうなサイズを置く場合は、スプレーで苦くしておくことをを勧めましょう。
特に子犬の時期は何でも食べてしまいます。