整形外科

現役臨床獣医師が解説!①トイプードルの橈尺骨骨折の治療

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本シリーズでは、私が経験した実際の症例をもとに、そこから考えられる座学とポイント、

私が思い描いた治療経過をまとめていきます。

そして、学生の時から知っておきたかった情報をまとめていきます。

第1回目は橈尺骨骨折です。

現役臨床獣医師が解説!①トイプードルの橈尺骨骨折

橈尺骨骨折とは?

小型犬が多い日本にとって、橈尺骨骨折は避けては通れない病気です。

特に多いのが、トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、柴犬、イタリアングレーハウンドなどです。

コーギーやミニチュアダックスに少ないのは不思議です。

時々大きいのに、ボルゾイやサルーキーの橈骨尺骨骨折がきます。

骨の形が関係していて、弓のようにしなって折れるのかな?体型の割に骨が細くて長いことで、たわむのが原因?

体の構造からでしょうか?

原因として多いのは、落とした、高いところからのジャンプなどです。

経験があるのはゴルフの練習をしていて、ゴルフクラブに当たった、交通事故というものあった。

骨折について

骨折の種類は、直達外力、介達外力があります。

直達外力は、上記の例でいくとゴルフクラブのような直接のダメージ。

介達外力は、ジャンプなどの間接的な骨へのダメージです。

どれだけの力が加わったかにより、筋肉や血管、神経などの組織の損傷度合いの強さが違います

後遺症や、予後に関わってきます。

骨折自体は、年齢、開放の有無、骨折部位、骨折形態に分類

年齢

年齢が特に6ヶ月未満、この場合は成長板骨折に注意します。

成長板骨折にはSalter-Haris1-6型まで分かれます。

5型、6型はその当時はレントゲン検査はわからない。

つまり、ジャンプして明らかな骨折がなくても、成長板早期閉鎖、つまり成長と共に足の変形(外旋や前屈など)に注意する必要があります。

4週間程度で癒合するため、早期のインプラント抜去が望まれます。

開放か閉鎖か

開放骨折か閉鎖骨折どうかは、骨が外に出ていたかによって変わります。

Ⅰ型:1cm以下の小さな裂創

鋭利な骨折端が皮膚を貫通しすぐに戻った状態

→特に橈尺骨・脛骨骨折では注意!猫では大腿骨も多い

Ⅱ型:1cm以上の裂創、中程度の軟部組織損傷

Ⅲ型:広範囲の皮膚の剥離、重度の軟部組織損傷

感染を伴う複雑な状態の骨折を複雑骨折と言います。

骨折部位

骨折部位は、遠位、骨幹部、近位、関節内、関節外に分かれます。

関節内骨折の場合は、完全な整復が必要なため、後述の解剖学的整復、直接的癒合になります。

 

骨折の分類
  • 不完全骨折
  • 完全骨折:単純、楔形、粉砕、分節

に分かれます。

さらに、完全骨折の内、骨折の形で

骨折の形

  • 横骨折:30度未満の角度
  • 斜骨折:30度以上の角度
  • 短斜骨折:骨折線が直径の2倍未満
  • 長斜骨折:骨折線が直径の2倍以上
  • 螺旋骨折:斜骨折のひとつ

 

ここまでが分類のお話です。

治療の難易度は

注意ポイント

横骨折→斜・螺旋骨折→楔形骨折→粉砕骨折の順

 

さて、今回の症例ですが、

今回の症例は、

ポイント

右橈尺骨骨幹部遠位単純骨折、閉鎖骨折

と診断できます。

さて、この症例が来た時に、

下記の順番で見ていきます。

1.全身状態の評価

直達外力、介達外力なのか

つまり骨折の治療<呼吸状態、内臓の損傷

となるわけです。

交通事故であれば、まずは胸のレントゲンで、肋骨の損傷や肺、心臓の状態の確認が必要です。

2.骨折部位の確認(単独 or 複数)

右足を上げていても、必ず左足、反対足もとりましょう!

3.骨折部位の剃毛(閉鎖 or 開放)

必ず毛を刈って確認しましょう。

また明らかに骨が出ていなくても、一度骨が皮膚を貫通して

皮膚に小さい傷がある場合もあるので、小さい傷も見逃さないように確認します。

4.X線検査により骨折分類

上記の種類を参考に確認します。

ここで診断を下します。

5.治療方針の決定(治療 or 紹介)

ここで骨折の難易度を判断します。

今回は

骨折の断端を見ると、鍵状になっていますね。

ポイント

つまり、実際の手術の時もこれを上手くはめれば簡単に合いそうってことがわかります。

ここの骨折で難しいのは、横骨折、遠位骨片が短すぎる場合(1cm以下)です。

6.術前計画 and/or 外固定

まず、骨を治す過程を理解し、方法を選択する必要があります。

生物学的整復か、解剖学的整復かを選択します。

解剖学的整復

–全ての骨片を元の位置に戻すこと

直接的癒合

  • 解剖学的整復
  • 絶対的安定(強固)
  • 骨片間の間隙 1mm未満

単純骨折、関節内骨折、整復可能な骨折

生物学的整復

–骨片にはあまり触れずに、アライメントのみを整復すること

間接的癒合

  • 生物学的整復
  • 相対的安定(柔軟)
  • 骨片間の間隙 1mm以上

整復不可能な骨折

 

今回は橈骨尺骨骨折なので、

解剖学的な整復をして、橈骨は直接的癒合を狙おう!

と考えるわけです。

 

プレートを設置する場所

プレートを設置する場所ですが、テンションサイドという考え方があります。

ポイント

骨には、コンプレッションサイドとテンションサイドがあります。

つまり体重がかかった際に屈曲する力が働くか、伸長する力が働くかによって変わります。

ポイント

例えば橈骨では、頭側面がテンションサイド、尾側面がコンプレッションサイドとなります。

どうしてもコンプレッションサイドにプレートを設置しないといけない場合(上腕骨内側上顆など)は、

術後に外固定=バンデージを行う。

という戦略になるわけです。

 

尺骨は治療しない?!

橈骨尺骨では、体重を支えているのがほとんど橈骨で、尺骨は腕の回転に関係しているだけのため、

注意ポイント

トイプードルクラスの小型犬では、尺骨に治療はしません。

ちなみに、橈骨を合わせると、尺骨も自然と近くに合います。

(これを逆手にとって、尺骨が合っていると、橈骨があっていることになる)

したくでも、幅が数ミリなので、できないんですけどね。

尺骨の治療をする場合は、小型犬でも尺骨近位の骨折、大型犬の尺骨遠位骨折です。

 

インプラントの選択・工夫!

インプラントには、プレート、創外固定、ピンなどがあります。

橈骨の整復には、プレートを使うことがほとんどです。

動物の体に完全な直線は存在しません。

しかし、販売されているプレートは直線ですので、曲げる必要があります。

橈骨の橈は、漢字辞典で調べると、 ①たわむ。たわめる。まがる。まげる。 ②みだす。みだれる。 ③くじく。弱める。 ④かじ。かい。船を進める道具。

と出てきます。

たわむんです。

実際に、模型で見ると

少したわんでいますよね

これにプレートを曲げて合わせなければいけません。

 

7.手術

術後管理・骨癒合評価

さて上記のことを考えて望んだ手術の結果です

しっかり結果を受け止めて、反映して、次に生かしましょう

見るべきポイント

骨折面の整復

スクリューの長さ(皮質を噛んでいるか)

関節内にスクリューが入っていないかどうか?

このような項目を4Aと言います。

  • [Alignment]回旋、屈曲、長さなど骨が正常軸を保った形であるかどうか、遠位近位関節面同士が並行かどうか
  • [Apposition]骨折端あるいは骨折片の相互の位置関係つまり骨折端骨皮質の接着度の評価
  • [Apparatus]インプラントなどの固定器具、プレート固定であれば、スクリューとプレート、創外固定であれば、ピン、クランプ、コネクティングロッドの評価を行なう
  • [Activity]骨の生物学的活性。一般に多くの骨折は12〜16週で癒合するが、骨癒合までの時間は動物の年齢、障害の程度、感染の有無、固定方法、手術の侵襲などによって変化する。

術後はこの4つを2方向からレントゲンをとって確認することになります。

 

最後に

いつスクリューやプレートを抜くか

小型犬であれば、プレートは抜かないことが多いです。

しかし、ストレスシールディングと言って、プレートを入れると、

注意ポイント

ほとんどの体重の負荷=負重がプレートを介してしまうと、骨がサボって痩せてしまいます。

これを防ぐために、あえて固定強度を落とし、自分の骨で体重を支えてもらうようにします。

これを間引き、一部のスクリューを抜く、ディスタビライゼーションと言いいます。

抜くスクリューは、最遠位と最近位以外を抜くことが多いです。

プレートを全部取ってしまうと、再骨折してしまうこともあるので、プレートと最近位、最遠位のスクリューは抜きません。

ここに注意

ただし、成長板骨折、飼い主の希望、寒い地域、イタリアングレイハウンドなどの前肢の組織が薄くプレートで皮膚が盛り上がる場合は段階的に抜くことが多いです。

上記を参考に、レントゲンで評価し、スクリューを抜くタイミングを決めることが多いです。

スクリューを抜いて、抜いたスクリューの穴が埋まっていた場合は、プレートを抜くか、再診終了にすることが多いです。

 

 

 

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