このような飼い主からの問診を一度は聞いた事があると思います。
という会話に聞き覚えはないでしょうか。
この様な症例の中には、病気によっては早期に手術を行うべきものもあります。
整形外科疾患の診断法を習得していれば、レントゲン検査をしなくても、おおまかな診断が可能です。
また、犬や猫の歩き方がおかしくて病院を受診したのに、レントゲンをとって問題ないと言われた飼い主は多いのではないでしょうか?
整形学的疾患において、何より重要なのは、歩き方がおかしくなる場所の特定であり、その特定をしなければレントゲン検査の意味はありません。
なかなか治らない犬や猫の足が痛い、引きずる、挙げるにお悩みの飼い主はこの検査をしてもらいましょう!
整形学的検査は、特殊な道具は必要ありません。
どこでも、自分の技術ひとつで歩き方に異常がある犬や猫の病気を診断可能です。
神経学的検査とともに、整形学的検査は技術・知識さえあれば、場所を選ばずに
動物に負担をほとんど与えず、神経の病気の場所がわかる、
非常に優れた確立された検査です。
この機会に、なかなかとりつきにくい、神経学的検査をマスターしてしまいましょう。
こんな方におすすめ
- 獣医整形疾患に興味がある、苦手な方
- 犬と猫の整形疾患の勉強をはじめてみたい
- 犬と猫の整形学的検査がよくわからない、不安がある
- 犬と猫の破行、足の症状の診察に不安がある
- 犬や猫の歩き方が痛そう、足を挙げる、引きずる症状がなかなか治らない
最後に整形学的検査を効率よく勉強できる教科書もまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
私は、現在は獣医師として、主に整形外科手術を担当にして、働いています。
以前は東京大学で勤務し、学会でもアワード賞をいただきました。
その際に勉強になったおすすめの教科書をご紹介します。
詳しくは、『プロフィールや獣医師そらんの手術歴』をお読みください。
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管理者のプロフィール
こんにちは、獣医師そらあんです。 この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。 今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭 ...
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獣医師解説!犬と猫の整形外科学的検査:足が痛い、引きずる、挙げるを診断しよう!
犬や猫の整形学的検査が苦手な獣医は多い?
確かに、整形外科が苦手な獣医師は多いです。
それは遭遇する機会が少ないためです。
苦手意識を持つのは、その疾患を「知らない」からです。
整形疾患は、遭遇する機会は他と比べて少ないものの、診断そのものは簡単です。
特徴的な外貌、歩様、座り方で瞬時にわかる物もありますし、骨折はレントゲン一枚撮るだけで診断はできます。
また解剖を熟知していれば、腹部の臓器と違い、筋肉や神経、骨、靭帯は動く事がないので、どこに異常があるか触診だけで診断できる事がほとんどです。
対して、例えばお腹の超音波検査は、お腹の中の臓器は動くので、全てを網羅することは非常に難しいです。
しかし、整形外科疾患を診断するための確立された方法はあまり授業でも教わらないですし、紹介されていないのが現状です。
日常の診察の限られた時間の中で、見落としなく、系統立てた検査を遂行するためには、
画一化された整形外科学的検査法を使って、それに沿って検査を行う事が見逃しがなく、効率よく診断に導く手順です。
検査シートを活用する事で、毎回決まった方法で検査を行うことができるため、
見落としなく、どの獣医師でも同じ項目を同じ質で検査する事が可能になります。
今回は、そんな苦手意識を持ち易い整形疾患を得意にして、自らの武器となるステップを、 整形学的検査の進め方に沿って共有したいと思います。
犬や猫の足の症状、歩き方がおかしい、足を痛がるの診察で重要なのは、下記の流れで行うことです。
整形外科学的検査の前に獣医師が行うべき事3つ!
跛行を主訴とする症例に対する診察の際には、基本的ですが、問診、視診、歩様が重要です。
犬と猫の整形外科学的検査の問診
シグナルメント及びヒストリーから得られる情報、年齢、品種及び外傷歴などは鑑別診断リストを作成するのに重要です。
更に
症状の発症時期過去の発症履歴症状進行程度についての情報
- 症状の発症時期
- 過去の発症履歴
- 症状進行程度についての情報
も疾患の性質を推測する上で有用となります。
具体的には、
- 一般項目として、品種、年齢、性別、体重。
- 原因は、外傷性、非外傷性。
- 症状の発現は、常時、運動時、運動後、寝起き。
- 進行度は、悪化、良化、変化なし。
- 他には、投薬歴や治療歴、散歩時間、運動の程度
です。
上記の問診を終えただけで、かなりの病気に絞れます。
むしろ、整形外科学的検査をしなくても、問診だけでかなりの病気は絞れます。
ある程度病気が浮かんでくれば、あとはそれを証明するために、整形学的検査やレントゲン検査を行うだけなんです。
ポイントを抑えることで絶対に見逃してはいけない病気の見逃しを回避できます。
例えば、
- 大型犬に多い病気、小型犬に多い病気、
- 若齢・高齢で多い病気、
- 前肢に多い病気、後肢に多い病気
- 破行の程度:完全挙上、負重性破行、非負重性破行、間欠的破行
これらの、ポイントをまずは押さえましょう!
犬と猫の整形外科学的検査の視診
診断は、まず動物の外貌を十分に観察することから始まります。
飼い主からの稟告では、左右が違うこともあります。
特に前足は判断も難しいため、まだ緊張していないふとした歩きが診断につながることもあります。
患肢の挙上が認められる場合は明らかですが、認められない場合においても、負重程度で対側肢と比較する必要があります。
ここに注意
見るのではなく観る!ことが重要です。
犬と猫の整形外科学的検査の歩様検査
患肢が一つとは限りません。
外貌を観察した時点で病変が存在する肢が強く疑われている場合においても、
他の肢に病変が存在する可能性がある為、必ず四肢全体を観察します。
歩様を検査する場合は、通常、常歩と速歩とスピードを変えて観察を行います。
ここまでくるとかなり病気は絞れているはずです。
犬と猫の整形外科学的検査の触診
上記が終わったところで、かなり疾患は絞れているはずです。
ここからはそれを確認するための作業として、実際に体に触っていきます。
ここまで一切動物に触らなくてもできる検査です。
動物に触る前に、ある程度の病気、そして病気がある足、どの足を検査するべきかが、見当がついている状態のはずです。
犬と猫の立位の整形外科学的検査
起立位では、
- 筋肉量の左右差
- 関節の腫脹の左右差
を検出する事が、主な目的となります。
四肢の近位から遠位にかけて触診を進めます。
動物の後ろに立って、チェック表に基づいて一つずつ確認していきます。
犬と猫を横に倒しての整形外科学的検査
この段階では、病変が存在する患肢を特定できている事が前提であり、
更に疾患を5つ程度に絞れていると、この検査の精度が更に上がります。
患肢の触診の前に、必ず対側肢の触診後に行います。
そして四肢全てにおいて検査を行います。
対側肢を最初に触診することによって、その肢が正常または異常であろうと、症状が出ていない肢としての基準となります。
横臥位での触診は、前肢及び後肢の遠位から近位に向けて慎重に触っていき、痛いところを見つけます。
また各関節に関しては、
- 骨、靭帯、腱、神経の疼痛
- 関節可動域の評価
- 関節の腫脹の程度
- 関節触診時の疼痛または違和感の有無
に関しての評価を行います。
犬と猫の整形外科学的検査:足が痛い、引きずる、挙げるを診断しよう!のまとめ
この様に系統立てた検査手順(外貌、歩様、触診)を常に意識して検査を進める事が重要です。
- 各筋肉はどこから始まり、どこに付着しているのか
- 他の筋肉との位置関係
- 機能(屈曲、伸展)は何か
- 関節は何度まで可動域があるのか
など整形学的検査を行うには上記のような基本的な構造を知っておかなければなりません。
正常な解剖を知らないと触っても異常がわかりません。
普段何気なく、触っている犬の体も、解剖を意識して触ると、また違った評価ができるようになります。
これからはぜひ症状がない犬に対しても、健康診断などで整形学的疾患を使い、
慣れて、苦手意識をなくせば、各肢1分程度で触診ができる様になります。
そうすれば、実際に疾患に直面したときに自信を持って、素早く異常が検知できる様になります。
犬と猫の整形学的検査を習得できるおすすめの教科書
今すぐ実践!神経学的検査と整形外科学的検査のコツ
MVM連載「神経学的検査を習得しよう!!」と「整形外科学的検査も習得しよう!!」が大幅な加筆を経て待望の書籍化!
連載時にウェブで公開した動画122点に加え、新たに32点の所見・検査動画を追加。検査・診断の基本と実際がよくわかります。
診断に必要な各検査をコンパクトに紹介しているので、新人獣医師もベテラン獣医師も、診察室に1冊、備えておきたい解説書です。
犬の整形外科触診テクニックonDVD
整形外科的疾患の診断は視診・触診のテクニックがものをいい、治療・予後を左右すると言っても過言ではありません。
適確な診断が治療後の患者のQOLを高めます!!
本ブログでは、詳しく知りたい飼い主、獣医学生、進路や勉強に悩んでいる獣医師向けに、
出来る限り詳細に書いていますので、ぜひ他の記事もお読み下さい。
参考になれば嬉しいです。ここまでお読みいただきありがとうございました。